脳神経外科領域におけるMR Bone imaging : oZTEoの活用法


社会医療法人孝仁会 釧路脳神経外科
診療放射線部 谷尾 倫志 様

 

国際親善総合病院は1990年に関内から居を移し、泉区唯一の総合病院として地域の皆様に育まれています。地域医療に尽くす精神を受け継ぎ、救急医療や地域完結型のがん医療など急性期医療を中心に、地域住民の方々のご負託にお応えしております。

Fig1. 国際親善総合病院 診療技術部放射線画像科

 

はじめに

 

当院では2022年5月にRevolution Ascendを導入し、現在RevolutionCTとの2台体制で検査を行っております。AscendはRevolution CTと全く同じユーザーインターフェイスを有しているだけでなく、撮影条件の自動設定が可能なAuto Prescriptionやディープラーニング再構成であるTrueFidelity(以下TFI)も搭載しています。開口径も従来の64列CTの焦点ー検出器間距離を維持したまま5cm広い75cmとなったことで、腕上げの困難な患者様や状態の悪い患者様もスムーズに撮影することができます。


Fig2. 従来CT、Revolution Ascend、RevolutionCTの外観

このようにRevolutionCTと同等の撮影が可能なため、冠動脈検査を除くすべての検査において機種間での検査振り分けをせずに運用しております。特に、前述したAuto PrescriptionやTFIを使用することで、オペレーションだけでなく、画像もRevolutionCTと同等の画質を得ることができましたので紹介致します。

 

Auto Prescriptionによる撮影条件の最適化

 

Auto Prescriptionとは、あらかじめ体型に応じてパラメーター(管電圧、最小/最大mA、SFOV、回転速度、ヘリカルピッチ、 ASiR-Vの強度)やNoise Index(以下NI)を設定することでスカウト情報より患者サイズを認識し、自動的に最適な撮影条件が選ばれる機能になります。
自動露出機構である3D mA ModulationはmAの変調のみであったのに対し、Auto Prescriptionを併用することによって体型ごとにターゲットとするSDすなわちNIや、回転時間やヘリカルピッチなどを設定することができます。

当院では体型によって撮影条件のさらなる最適化が必要な次のようなケースにおいてAuto Prescriptionを使用しています。(Fig3)

1)体格が大きい患者様で管電流が最大mAに頭打ちし不足しないように、体格に応じて回転時間やヘリカルピッチの設定を変え適切な線量を出す方法(Fig4)

2)コントラストがつきにくい るい瘦患者様で、適切な線量を出すことでウインドウ幅を絞りコントラストをつけた際に画質を担保する方法(Fig7)

Fig3. Auto Prescription概念図

 

1)の設定例をFig3に示します。一般的な体格(AP+LAT58cm)の患者様は回転時間0.6秒なのに対し、大きい患者様は回転時間1秒で撮影することでmAの頭打ちを防ぎ画質を担保するようにAuto Prescriptionのプロファイルを設定しました。
その結果、従来CTと比較してmAの頭打ちが起こりやすい大きい体格の患者様において、SDが目標NIに等しく良好な画像を得ることができました。実際に、大動脈弓部~肝臓下縁までのmAを確認すると、従来CTでは頭打ちがおこっているのに対し、AscendではAuto Prescriptionによって自動で回転時間が1秒に変更されたため、頭打ちが起こらず適切なmAを使用することができていることがわかります。(Fig6)


Fig4. Auto Prescription 1)体格に応じてパラメーターの設定を変え適切な線量を出す方法

Fig5. 従来CTとRevolution Ascendでの体格が大きい方の腹部画像

Fig6. Fig4の撮影における管電流の推移(横軸:スライス位置 縦軸:管電流)
大動脈弓部~肝臓下縁までの管電流の推移。従来CTではピッチ1.375、回転時間0.4秒で撮影、通常Ascendではピッチ1.375、回転時間0.6秒で撮影しておりますが今回Auto Prescriptionにより、自動で回転時間1秒が選択されました。従来CTではほぼ頭打ちしていますが、Ascendでは回転時間の自動調整で頭打ちを防ぐことができていることがわかります。

2)の設定例をFig7に示します。一般的な体格(AP+LAT58cm)よりも小さい患者様において通常のNIよりも低いNIが自動で選択されるように”中等度の減少(Moderate Decrease)“を選択しています。これによって、コントラストがつきにくいるい瘦患者様において自動的にNIが低くなるAuto Prescriptionのプロファイルを設定しました。


Fig7. Auto Prescriptionの設定 2)体格に応じてNIを変化させる方法

るい瘦患者様では脂肪が少なく、腹水などを有している場合には特にコントラストがつかないため通常の画像では読影困難な印象がありますが、Auto Prescriptionによって自動的にNIが通常のNIより低くなることでSDが向上し、WWを狭めてコントラストをつけても画質が十分に担保されます。
従来CTでは通常NI9.8で撮影しており小さい患者様にも同様のNIのため、コントラストをあげるためにWWを150に絞るとノイジーに感じられますが、Ascendでは通常NIに対しAuto Prescriptionによって自動的にNIが調整されWWを絞ってもノイズの少ない良好な画像を得ることができています。また、TFIを用いることでさらなるノイズの少ない良好な画像を得ることができています。(Fig8)


Fig8. 従来CTとRevolution Ascendでの体格が小さい方での腹部画像の比較

TrueFidelity Images(TFI)

 

TFIはディープラーニングを用いた画像再構成法で、質の高いFBPを教師画像とし、逐次近似法の課題であったストラクチャーの違和感を抑え、非常に優れた画質と望ましいノイズストラクチャーを得ることが可能です。
TFIは、 RevolutionCT 、Ascendともに使用可能ですが、 AscendではTFI専用のリコンサーバー(eBox)を用いて再構成されます。TFIは強度(L,M,H)が選択できますが、どの強度でも違和感がなく、当院ではすべての画像で使用しております。


Fig9. TrueFidelity

Revolution AscendとRevolutionCTの画像比較

 

RevolutionCTと比較して同等のオペレーションや機能を有していることを紹介しましたが、 RevolutionCT と異なる点として最大管電流が低いことが挙げられます。AscendではAuto Prescriptionを使用することによって体格の大きい患者様に対しmAを担保することができますが、撮影スピードを下げられないような状態が悪くかつ、体格の大きな患者様の撮影においてTFIが有用であった例をお示しします。
Fig10は85kgの患者様でいずれも腹部から骨盤5秒程度の撮影時間のAscendとRevolutionCTの画像になります。TFIを使用することで装置間にSDの差がなく視覚評価においても十分な画像が提供できております。また、3か月間の平均線量を比較しても、同等の画質で線量は全体的にやや低くなっていることがわかります。(Fig11)リコンスピードが両機種間で異なるため、今後AscendでのTFIのリコン時間改善を期待しております。


Fig10. 85kgの患者様におけるRevolution AscendとRevolutionCTの画質比較
撮影スピード同等であってもTFIを使用することでAscendとRevoltuion CT同等の画質を得ることができた

Fig11.DRLsとRevolution Ascend、RevolutionCTの平均線量比較(体重50~70kg)

まとめ

 

Revolution Ascend導入後、ユーザーインターフェースも揃い両機種で使用できる機能が統一されました。Auto Prescriptionでは体型にかかわらず、安定した画質が自動で得られるようになりました。また、TFIを使用し装置間でのスペック差を感じない高画質な画像が得られています。Fig11は当院の3か月間の平均線量ですが、DRLsと比較してRevolution AscendとRevolutionCTともに約50%少ない線量で検査を提供できています。 Revolution AscendではGEのフラッグシップCTであるRevolutionCTと同等のパフォーマンスを得ることができ、当院では64列タイプのRevolutionCTとも言えるほど活用しています。

 

※お客様の使用経験に基づく記載です。仕様値として保証するものではありません。

撮影条件や部位、体格によって実際の被ばく量は変わります。
記載内容は、お断わりなく変更することがありますのでご了承ください。

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