Revolution AscendがもたらすClinical Impact


医療法人 渓仁会 手稲渓仁会病院
診療技術部 板谷 春佑 様

はじめに

 

Computed Tomography:CT装置は日進月歩進化し続け、近年人工知能Artificial Intelligence:AIを応用した技術が登場した。当院では2022年9月にAI技術を搭載したRevolution Ascendを導入し日常診療や3次救急撮像の一端を担っている。
このAI技術搭載CT装置導入によりCT撮像ワークフローがどのように改善したのか紹介する。

 

Revolution Ascendの概要

 

Revolution AscendはEffortless Workflow(無駄のないワークフロー)をテーマにDeep Learning 3D Camera:DLカメラ、自動撮像範囲調節技術:Smart Plan、Deep Learning Image Reconstruction等のAI技術を搭載している。装置スペックはビームコリメーション0.625 mm×64列、ガントリ回転速度最大0.35 sec/rot、7.0 MHUの管球を搭載しており、日常診療だけではなく救急撮像まで幅広く撮像可能である。また回転速度0.35 sec/rotとヘリカルピッチ1.5を組み合わせた高速撮像は175mm/秒の撮像を可能とし、呼吸停止不可能な患者や小児の撮像に有用である。

 

DLカメラによる自動ポジショニング

 

DLカメラは3Dカメラの技術を用いて2次元の被写体の輪郭情報だけではなく、被写体の体厚(深さ方向)を認識することができる。DLカメラは寝台直上の天井に設置されており、あらかじめ撮像プロトコルにランドマーク部位を指定することで、ランドマーク、スカウト撮影範囲および寝台高さを自動で決定することができる(図1)。その後CTオペレータはガントリに設置してあるタッチパネルよりスカウト撮影範囲を確認するだけで速やかにスカウト撮影に移行することができる。
CT撮像は患者をガントリ中心にポジショニングすることは基本であるが、従来は目視でレーザーを確認し、患者の体厚に合わせて寝台高さを調整するためオペレータによるばらつきが生じていた。
しかしDLカメラを用いることでオペレータによる寝台高さのばらつきが有意に小さくなりCT撮像の再現性が向上した(図2)。さらにDLカメラは使用する施設の固定具など状況に合わせた適正な寝台位置になるように調整する機能を有しており、工場出荷時の寝台位置を施設ごとに最適化することができる。

 


図1 DLカメラによるスカウト撮影範囲の自動決定
患者が寝台に横になると瞬時に人体を認識し、自動で設定したスカウト撮影範囲が表示される

図2 被写体中心からの寝台高さ誤差
目視による従来のポジショニングでは被写体中心からの誤差が-0.92±16.15 mmであり、DLカメラ導入後では被写体中心からの誤差が-0.77 ±3.74 mmとなり、有意差を持って寝台高さのバラつきが解消されている

 

また救急医療ではDLカメラがリアルタイムで寝台上を映すことで、点滴や挿管チューブ、生体監視モニターなど患者以外の様々な機器を一目でCTガントリに接触すると認識することができる。さらに自動でスカウト撮影範囲を認識し表示する機能があり、表示精度も担保されており微調整を行う程度である。現在のところDLカメラで認識できなかった事例はなく、速やかにスカウト撮影まで移行することが可能となっている。

 

Smart Planを使用したスキャン計画

 

Smart Planは撮像計画時、撮像プロトコルをもとにスカウト上に推奨撮像範囲を自動で表示する機能であり、体軸方向(Z軸方向)の撮像範囲のみだけではなく、Display-Field of View:D-FOVやin-plane(XY軸方向)の再構成中心も自動で設定される。Smart Planはプロトコル作成時にある程度調整が必要であるが、オペレータは表示された推奨撮像範囲を確認・調整するだけで速やかにCT撮像することができる(図3)。D-FOVはCTの画像特性上、必要最小限の範囲に設定することで画質向上を図れるがオペレータによるばらつきが生じる可能性があり、複数相撮像やフォローアップを行う際D-FOVや再構成中心が異なると画像読影に影響が生じる。しかしSmart Planを使用することによりオペレータによるD-FOVの設定や再構成中心のばらつきが減少し、再現性の高い画像を再構成することができ、さらにワークフローの向上もした。

図3 Smart Planによる肺~骨盤の撮像計画
A:撮像プロトコルに設定してあるデフォルト撮像範囲
B:Smart Planによる推奨撮像範囲
Smart Planにより肺~骨盤までの撮像範囲およびD-FOVが自動で設定されている

 

 

Effortless Workflowの効果

 

紹介してきた各AI・自動化技術はCT撮像ワークフロー改善に大きく貢献している。図4に単純CT撮像における撮像時間の比較を示す。計測方法は患者ポジショニング後の寝台上昇時から、撮像終了後寝台最下降時の時間を計測した。Effortless Workflowを有しないDiscovery 750HDでは平均撮像時間158 secに対し、Revolution Ascendでは平均撮像時間117 secであり、Revolution Ascendでは有意差をもって40 sec程度撮像時間が短縮していた。
CT撮像は撮像オーダーに対する検査方法やMPR作成等の処理および患者状態の確認など様々な部分に気をつけなければならない。その中で撮像時間の短縮は1検査・1患者に集中できる時間が増え、より目の前の患者に有益なCT撮像にすることが可能となる。
さらに日々検査に追われるCT業務の中で3D作成の時間や残業時間の短縮にも寄与し、対費用効果の向上にもつながる。

図4 単純CTにおける撮像時間の比較
AI技術搭載CT装置(Ascend)はAI技術非搭載CT装置(他機種)と比較して有意に撮像時間が短縮した

 

まとめ

 

Revolution AscendはAI技術を搭載した新たなCT装置であり、その機能を最大限に活用することで日常診療のワークフロー改善に大きく貢献している。AI・自動化技術は日々進化を遂げており、性質をうまく理解し活用することでCT撮像の再現性向上やワークフロー改善および画質改善につながり患者利益が大きく向上していると考える。本内容が明日からの診療に一助になれば幸いである。

 

※お客様の使用経験に基づく記載です。仕様値として保証するものではありません。

撮影条件や部位、体格によって実際の被ばく量は変わります。
記載内容は、お断わりなく変更することがありますのでご了承ください。

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