β遮断薬を用いない心臓CTAngiography


岡崎市民病院
放射線室 下村 勇人 様

病院紹介

 

岡崎市民病院は、愛知県のほぼ中央に位置し、西三河南部医療圏で唯一のがん診療を含めた高度急性期医療を担う地域中核病院である。病床数680床・救急救命センターを併設し、第3次医療機関として救急患者を積極的に受け入れ、2021年には新CT装置、Revolution CTを導入した。

「地域とともに”ウェルビーイング(持続的な幸せ)”を創造する」をコンセプトとして、地域の医療ニーズに応え地域とともに歩むべく、安心安全な検査の実施と心温まる医療を提供できるよう日々努めている。

図1. 病院内外観

 

β遮断薬を用いない冠動脈CTの運用

 

当院における冠動脈CT検査は、従来の64列CTでは心拍数が70bpm以上でβ遮断薬としてランジオロール塩酸塩を静注していた。CTの更新に伴い、Revolution CTとSnapShot Freeze2.0を導入したことで、高心拍数や心房細動(atrial fibrillation : af)などの不整脈でも動きの少ない画像を作成可能となった。
従来では、循環器内科医師の立ち合いのもとで高心拍数やafの症例に対してβ遮断薬を使用していたが、CT更新時、循環器内科医師との協議によりβ遮断薬を使用しない運用へ変更したため、医師の立ち合いも不要となり、業務の負担軽減に大きく貢献している。

今回、冠動脈CT検査では難症例となりうる様々な拍動の状態において、β遮断薬を使用せずに良好な画像が作成可能であるかを検討したため報告する。

図2. 当院のCT検査環境

 

表1. 撮影条件

 

Revolution CT×SnapShot Freeze2.0

 


図3. Revolution CT概要

図4. SnapShot Freeze2.0概要

 

冠動脈CT検査におけるRevolution CTの特徴として、256列のエリアディテクタと、オートゲーティングという機能により、撮影直前の心拍波形から、R波からR波の間で最適な撮影タイミングを自動で決定する。また、撮影後にはスマートフェーズという機能ですべての冠動脈が最も止まっている最適位相を自動で選択する。選択された最適位相の画像にSnapShot Freeze2.0を併用することにより、実効時間分解能は24msecとなり、より動きの少ない画像が得られる。

 

被検者

 


図5.症例群と心拍数内訳

 

2021年9月から2022年5月の期間に冠動脈CT検査を施行した症例から、現装置導入以前の運用でもβ遮断薬を用いない30例(心拍数:60.3±7.2)をA群、β遮断薬が必要であった高心拍数の34例(心拍数:88.7±12.1)をB群、必要時にβ遮断薬を用いていた af と診断された31例(心拍数:73.9±17.8)をC群とし、心拍数や拍動状態の異なる計95例を抽出し対象とした。ただし冠動脈ステント留置術後、冠動脈バイパス術後、また石灰化を伴う症例を除外した。
左前下行枝(Left anterior descending artery:LAD)、左回旋枝(Left circumflex artery:LCX)、右冠動脈(Right colonary artery:RCA)のCurved planer reconstruction(CPR)画像について、診療放射線技師6名、循環器内科医師1名で下記の4段階にて視覚評価を行い、A群に対してB群とC群にそれぞれ統計解析を行った。検定はp<0.05を有意とした。

 

評価基準

 

 

結果

 


図6.様々な心拍状態におけるイメージクオリティーの比較

 

LAD、LCXにおいて、A群に対してB群では若干低い傾向を示したが3分枝ともA-B群間、A-C群間で有意差は見られなかった。これにより、β遮断薬を使用しない条件下において、様々な心拍状態であっても画質に優劣は生じないと考えられる。

 

症例紹介

 


図7.当院で撮影した症例

 


図8.当院で撮影した症例

 

当院で実際に撮影した症例を示す。ケース1の症例は、グループAに相当する心拍数が56の症例、ケース2の症例は、グループBに相当する心拍数が82の症例、ケース3,4の症例はグループCの af 症例で、心拍数はそれぞれ113、103の画像である。高心拍の症例においても、グループAに相当するケース1に対して遜色ない画像であるといえる。

 

総括

 

当院ではRevolution CTとSnapShot Freeze2.0を導入して以来、循環器内科医師との協議を行い、ランジオロール塩酸塩を含めたβ遮断薬を一切使用せずに冠動脈CT検査を実施している。
今回の検討では、 Revolution CTとSnapShot Freeze2.0を併用することで、様々な心拍状態においてもβ遮断薬を使用せずに良好な画像を作成できることが示唆された。これらの運用の変更に伴い、冠動脈CT検査のスループットは向上し、従来に比べて1検査あたり20%程度短縮されていると考える。また、薬剤を使用しないという患者の身体的な負担の軽減、循環器内科医師の立ち合いが不要になったことによる業務の負担軽減かつ効率化に大きく貢献したと言える。

 

※お客様の使用経験に基づく記載です。仕様値として保証するものではありません。

撮影条件や部位、体格によって実際の被ばく量は変わります。
記載内容は、お断わりなく変更することがありますのでご了承ください。

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