脳神経外科領域におけるMR Bone imaging : oZTEoの活用法


社会医療法人孝仁会 釧路脳神経外科
診療放射線部 谷尾 倫志 様

 

釧路脳神経外科様では、GE社製3.0T装置 SIGNA™ Architectが2021年11月より稼働しており、数多くの新規アプリケーションをご使用いただいております。中でも、MRIによる骨イメージングであるoZTEoを積極的にご活用いただいており、本カスタマーボイスでは脳神経外科領域におけるoZTEoの有用性や活用法についてご執筆いただきました。

谷尾 倫志 技師

 

はじめに

 

oZTEoのメリットを簡潔に表現すると、「骨がわかる」ということである。
ZeroTE技術を応用し、従来は画像化が困難であった骨情報の取得が可能となり、骨折線等も明瞭に描出できる。さらに、当院のような脳神経外科病院では、脳外科手術の術前情報としてoZTEoを積極的に活用しており、本稿ではその有用性について述べる。


釧路脳神経外科 外観

1989年に釧路脳神経外科病院として開設し、孝仁会グループの基礎を築いた。2007年に釧路孝仁会記念病院が開設し、釧路脳神経外科へ改名。現在は脳神経外科と2010年に新設された泌尿器科の診療において、高度で専門的な医療を提供するクリニックを目指している。

 

骨病変におけるoZTEoの有用性

 

下記に示す3症例ともに、来院時、CT検査にて診断された症例である。
病変部位の形状変化を経過観察する必要があるが、その後のフォローアップではMRIにて検査を実施している。長期間の経過観察を行っている患者については、MRIのみでのフォローアップへの切り替えが可能となると考えている。骨腫瘍においては、短期間にサイズが増大することで悪性腫瘍の可能性が出てくると言われており、徐々に大きくなる場合は良性の可能性も含まれる。そのため、腫瘍サイズの経時的な確認が重要となる症例である。

 

◆ Case1. くも膜顆粒(arachnoid granulation)

 

◆ Case2. 骨腫瘍(osteoma)

 

◆ Case3. 骨腫瘍(osteoma)

 

脳神経外科医からは、「これらCase1、2、3の症例は全てCTとMRIの両検査にて経過観察中であった症例であるが、oZTEoによって骨情報の取得が可能になったことで、病変の大きさ、形状変化に対しての診断はMRIのみで可能である。」とコメントをもらっている。症例によってはCTを省略し、MRIのみでの評価が可能であり、患者負担を軽減することが期待できる。

 

手術支援画像におけるoZTEoの有用性

 

ここでは、Interhemispheric Approach(大脳半球間裂到達法) と呼ばれる、前大脳動脈(ACA)、前交通動脈(Acom)に対する未破裂脳動脈瘤クリッピング術におけるoZTEoの有用性を紹介する。
従来は、造影剤を用いたCT検査にて、骨、動脈、静脈を3D画像化し術前シミュレーション用として提供している。また、当院では術中感染リスクの観点より、副鼻腔、特に前頭洞の画像化も同時に行っている。oZTEoのが使用可能になったことにより、MRIのみにて骨(oZTEo)、動脈(3D-TOF)、静脈(3D-PC)の作成が可能となった。また副鼻腔の描出に関しては、CTと比較してもその描出能に問題はなく、比較的容易にVR作成可能であることが分かった。これらのことから、追加の撮像時間(3シーケンス撮像のため)を要するが、造影剤が不要であるという利点を活かしたMRI術前シミュレーション用フュージョン画像の提供が可能となる。

 

oZTEoの画像から骨、副鼻腔を、MRA(3D-TOF)から動脈を、MRV(3D-PC)から静脈をそれぞれVRを作成しフュージョン処理を行った。エントリーポイント(開頭野)決定のために、静脈と前頭洞(副鼻腔を含む)の位置確認が重要となる。そのため、骨、副鼻腔、静脈を同時に表示する必要があり、その画像情報は左右のどちらからアプローチするかの決定に用いられる。

 

 

脳神経外科医からは、MRIで作成した画像でもCT同様に前頭洞を確認でき、また造影剤を使用しなくても上矢状静脈洞や架橋静脈等の静脈や動脈の確認も可能であるため、術前シミュレーション画像として有用である、とコメントをもらっている。最大の利点としては、造影剤を用いることなく被曝無しでの術前情報取得が可能という点であり、患者負担を軽減することが期待できる。

 

最後に

 

当院におけるoZTEoの使用経験について臨床画像を用いて紹介した。骨情報についてはCTを中心としたX線画像が中心であったが、oZTEoが導入されたことでMRIの活用の幅が広がった。oZTEoはZeroTE技術を用いた骨画像であり、骨折などの整形外科領域での活用が注目されているが、本稿で紹介したように脳神経外科領域においても有用であり、特に当院では、術前シミュレーションにおけるoZTEoの有用性を高く実感しているところである。今回紹介したようなoZTEoの活用法以外においても今後様々な領域におけるさらなる臨床応用が期待される。

 

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