SIGNA™ Artist 1.5T AIR Editionの使用経験


時正会 佐々総合病院
放射線科 水流 伸也 様
  • 時正会 佐々総合病院様では、最新の受信RFコイルであるAIR™ Anterior Arrayコイル(以下AIR AAコイル)を搭載したSIGNA™ Artist 1.5Tが2021年5月から稼働開始しています。
    本稿では、AIR AAコイルはもちろんのこと、ワイドボアガントリーや脱着式寝台、インテリタッチなどの検査ワークフローに関わる内容も含めて、これまでの使用経験についてご執筆いただきました。

はじめに

佐々総合病院は多摩北部エリアの西東京市にあり、西武新宿線田無駅より徒歩5分の立地にあります。
その歴史は1908年の開院にはじまり、現在では急性期医療を中心とした地域密着型の中核病院として活動を行っています。標榜科は24科で病床数は183床です。2021年5月に長年使用していた他社のMRI装置からSIGNA™ Artist 1.5T AIR™ Editionに更新しましたので使用経験について報告します。当院導入機は脱着式寝台を採用し、AIR™ Anterior Array コイル(以下AIR AAコイル)を搭載した機種となっています。




佐々総合病院 外観

脱着式寝台について

前機種のMRIは寝台が固定式でしたので、患者が汎用ストレッチャーで検査に来た場合、専用ストレッチャーに乗り換えた後MRI室へ入室し、その後さらにMRIの寝台へ移動を行っていました。現在は、脱着式の寝台であるeXpress Dockable Tableを使用することにより、患者を汎用ストレッチャーから直接MRIの寝台へ移動することが可能となりました。患者の移動に費やす作業が2回の行程から1回の行程になったことで、患者入れ替えに掛かる時間が短縮しました。また、MRI検査スタッフ以外の職員が患者移動のために撮影室に入室することが無くなったので所持品の吸着事故が発生していません。

今回、脱着式寝台を初めて使用しますが、脱着時の手順についてはガントリー上部のモニターに表示される手順ガイドを確認しながら操作しています。




図1 脱着式寝台
(赤丸:脱着操作時にガントリーモニタに表示される手順ガイド)

インテリタッチ機能について

通常、被写体に対するゼロポイント設定を行う場合、寝台のテーブルスライドボタンを押し続けて被写体の検査基準位置をレーザー光の交点に移動させ、基準設定ボタンを押し、位置の登録を行ってからガントリー中心へ移動させます。一方でインテリタッチ機能を搭載した寝台では、寝台両側にタッチセンサーが埋め込まれているので、被写体の基準となる位置のタッチセンサーを指で押し、寝台中心移動ボタンを押すだけで被写体の基準位置をガントリー中心へ移動させることができます(図2)。そのため、従来のように患者の検査基準位置にテーブルをスライドさせている間、常にテーブルスライドボタンを押し続ける必要がありません。それによってテーブル移動時に両手が空き、操作ボタンのそばに留まる必要性がなくなるため別の作業を行うことが可能となります。例えば、寝台が基準位置へ移動している間に、ガントリー内部の寝台可動部と装置の間に酸素チューブや輸液チューブ等が移動テーブルへ巻き込まれないように両手で取り扱いながら安全確認に配慮することができます。



図2 ランドマーク時のインテリタッチ操作

ボアサイズについて

次に、ガントリーのボアサイズについてですが、前機種のMRIはボアの直径サイズが65.5cmでした。SIGNA™ Artist 1.5Tはボアサイズが直径70.0cmとなり、前機種MRIと比較して直径4.5cm拡大しました。ガントリーの内部空間が広がったことで検査時の圧迫感を軽減することができました。また、体格が大きい患者でも左右への移動可能な範囲が広がったので、躯幹部中心から遠い部位(肩から上肢にかけて)の撮影においても、対象部位を比較的容易に磁場中心へ配置することができるようになり、体位設定に要する時間を短縮することができました(図3)。併せて、撮像FOVの最大値が前機種の50.0cmから55.0cmに拡大したため対象部位がオフセンターとなるシチュエーションであっても信号強度の高い画像を提供することが可能となりました。


図3 AIR AAコイルを用いた肩関節撮像セッティング例

AIR™ Anterior Array コイルについて

ブランケット型のAIR AAコイルは重量が1.8kgとコイルとしては非常に軽く、AIR AAコイルを胸部や腹部に乗せた場合に、重さによる圧迫感を患者に与えることが無くなりました。高齢の患者など呼吸に不安がある場合でも安定した息止めが可能となり、データ収集時に呼吸の乱れによる不確定要素が発生する確率が少なくなりました。

表面の素材は柔らかく、加えてコイル内部の素子にINCAワイヤを使用しているため被写体との接触部分にコイルや端子等の異物感が無く滑らかな触知なので、検査の最中でもコイル接触部分からの不快感を抑えつつ快適に検査を行うことができています。様々な体型に合わせて密着しやすく深部方向の高いSNRを取得できる一方で、患者自身の体温が保温されやすくなることで発汗を生じる場合があるため、巻き方などの工夫について現在検討中です。

軽量であると共に、コイルサイズが長さ79cm幅66cmと、かなりの大判サイズのため有効感度面積が広く、柔軟性が高いので汎用性に富み、全身DWI含めた躯幹部の撮影から(図4、5)、肩関節などの四肢まであらゆる部位に使用が可能となっています。そのため部位によって使用するコイルの選択に迷う事がなくなり、患者へのコイル装着を容易に行うことができるようになりました。特に肩などの磁場不均一部位での検査でもAIR AAコイルの感度均一性が高いので、患者体位設定の不備による感度ムラが起きにくく、常にSNRの高い画像を提供可能となりました(図6)。



図4 AIR AAコイルを用いた全身DWI撮像セッティング例

図5 全身DWI画像
(左:MIP画像、右:Fusion画像)

図6 AIR AAコイルで撮像した肩関節画像
(撮像セッティングは図3を参照)

最後に

今回、SIGNA™ Artist 1.5T AIR™ Editionへ更新したことで、機器操作の簡素化による作業効率の向上や時間的パフォーマンスの改善を行うことができました。また、AIR AAコイル使用による利点が大きく、AIR AAコイルを使用することで体位設定が簡便になったこと、肩などの磁場不均一部位に対する画質の均一性やSNRの向上などといった画質改善が行われたので、機器更新が有意義なものとなりました。また、患者に対してもAIR AAコイルは軽くて柔らかい製品なので身体的な検査の負担を軽減する事が可能となりMRI検査に対する負のイメージや検査への抵抗を解消することに一翼を担っています。
現状として医師からは新しいMRI装置に対する画像の期待が高く、半年過ぎた今でも要望された画質に答えるため、撮像条件の調整に日々尽力しています。

以上によりSIGNA™ Artist 1.5T AIR™ Editionの導入と使用経験についての報告とさせていただきます。

※お客様の使用経験に基づく記載です。仕様値として保証するものではありません。

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