AIR™ Recon DLは従来のk空間フィルタを使用せず、収集したraw data 全体に対してアルゴリズムを適用するフィルタレス型のディープラーニングであるとされている。そのメリットとして、畳み込みニューラルネットワーク(Convolusional Neural Network : CNN) と呼ばれるディープラーニングネットワークを用いることで、画像再構成時のアポダイゼーションk空間フィルタを使用していない。これにより高周波成分のraw dataを損なわないことにより効果的に画像に反映させることを達成させている2)。
ネットワーク学習には、低SNR・低空間分解能・トランケーションアーチファクトの多いデータと、高SNR・高空間分解能・トランケーションアーチファクトの少ないデータを用いている。結果として画像ノイズだけでなく トランケーションアーチファクトも減少させながら アポダイゼーションフィルタの未使用により高周波成分データを維持した尖鋭度の高い画像が得られることにつながる。さらにDICOM画像でのアルゴリズムを使用していないことなどから解剖学的部位の制限はない3)。尚、MR29.1から、拡散強調画像へのAIR™ Recon DL技術が対応可能となりさらなる可能性が広がりつつある。
撮像時間やボクセルサイズとSNRはそれぞれトレードオフの関係にある。我々MRオペレーターは臨床的価値のある画像を収集するために現実的な撮像時間(体動や検査予約枠または対象疾患)の中で最大限(時には最小限)必要なSNR、CNRをゴールとして各種パラメータを調整しながら検査を進めている。TR、TEはもとより、Echo Train Length:ETLやParallel Imagingファクタ、これら各種パラメータ調整にも当然のごとくトレードオフが存在するのは周知のごとくである。近年では圧縮センシング技術でトレードオフの解決策の一つとされつつある4)。さらにAIR™ Recon DLは上記トレードオフを一掃するインパクトがある。我々は、簡易的ではあるがファントムにてそれぞれについて評価を行った。
撮像条件はDQEファントムをFast Spin Echo法TR/TE = 5000ms/95msEf, 面内ピクセルサイズ= 0.43mm, ETL=14(Parallel Imaging / Compressed sensing=Off)としてスライス厚のみ10mm, 7mm, 5mm, 3mm, 2mm, 1mm, 0.6mmと変化させて同一関心領域法にてAIR™ Recon DL On/OffでSNRを測定し、SNR上昇率を比較した。SNR測定は同一関心領域法で求め、以下の計算法で上昇率を求めた。
その結果、スライス厚が薄くなる(ボクセルサイズが小さくなる)につれSNR上昇率が上昇した(図3)。十分なSNRがある10mmでは10%程度であるの対して5mmで40%、1mmまで薄くなると100%のSNRの上昇率を認めた。AIR™ Recon DLには、「Low」「Medium」「High」の3段階の設定が可能である。それぞれについて93-402S型ファントムのピンパターンとスリットを使用して尖鋭性について視覚評価を行った。ピクセルサイズは0.32mmである。その結果、いずれのレベルにおいても0.5mmのピンパターンは評価可能になり、「High」がもっとも視認性が優れていた(図4)。
また同一ファントムにおいて空中信号法でCNR測定、差分法でSNR測定も行ったところ、CNR/SNRともに強度が強くなるにつれて上昇することが判明した。