麻酔科領域におけるポケットエコーの可能性 ~エコーガイド下穿刺から周術期トラブルにおける活用まで~

兵庫県立西宮病院 麻酔科
医長 古賀 聡人 先生

はじめに

私は3 次救命救急センターや地域周産期医療センターを有する地域の中核病院に勤める麻酔科医で、過 去に救急や集中治療に携わった経験から、現在は手術麻酔以外に術後疼痛管理チームと Rapid Response Team をマネジメントしています。エコーガイド下神経ブロックを専門の1 つとしていますが、小児専門 病院や救命救急センター在籍時からエコーガイド下血管穿刺の魅力にも取りつかれています。血管確保 を初めからエコーガイド下に行うことが多いですが、医療の質や手術室の効率的な運営の観点から有効と考えています。もちろん、エコーは診断にも有用で、POCUS(Point of Care Ultrasound)を麻酔科医に 必要な技能と考えています。まさに「エコーはともだち」、「エコーで見たものしか信じない」を体現する毎日を送っています。(出典がわかったらあなたはきっとサッカー好きでしょう)

日々の診療のどのようなシーンでポケットエコーをご活用されていますか?

上述のようにエコーガイド下血管穿刺に用いることが多いですが、透析患者や外傷の患者など血管確保 可能な部位に制限がある場合、最初に失敗すると他で穿刺する場所がなくなってしまうため「急がば回
れ」との考えからエコーガイド下に血管確保を行うことを推奨しています。また、出血性ショックや大 量出血が予想される手術などでは静脈路は入ればいいというものではなく、静脈路の太さが生死を分け
ることもあります。皮膚表面に浮いている血管が見当たらなければ、前腕の橈側皮静脈、上腕尺側皮静 脈、外頚静脈などで 16G の静脈路を確保するようにしています。研修医教育のバックアップにも 有用です。ブラインドで穿刺した後も容易にリカバリーすることができます。病棟からの静脈ルートで血管外 漏出を疑うことがまれにありますが、その際も血液の逆流を確認することに加えてエコーで血管内に静
脈留置針が入っていることを確認できると安心して手術中も使うことができます。エビデンスとして確 立しつつあり、橈骨動脈穿刺では初回成功率の上昇(Br J Anesthesia. 2016 [PMID:27106964])、静脈穿刺で
は穿刺回数の低下と所要時間の短縮( Br J Anesthesia. 2018 [PMID: 30032874])がシステマティックレビューで明らかになっています。
一方、エコーによる診断が周術期トラブルを未然に防ぐことがあります。多発外傷患者の手術中に気胸 を発症した症例を学会で発表した経験がありますが、その他にも長期臥床患者における深部静脈血栓症
の除外、緊急手術における胃内容量の確認、尿道カテーテル非留置時の膀胱エコーなど、手元にエコーがあるだけで安全な麻酔管理を行うことができ安心して麻酔を行えます。

Vscan Air を使ってみていかがでしたか?

エコーの画質がタブレットの画質に依存するため、ポケットエコーかつコードレスでありながらノートブック型エコーに比べても画質が負けておらず、動脈ライン確保に十分使用できると感じています。エコーの機種が変わるとボタン操作に戸惑うことも多いですが、Depth(深度)の調整をタブレットで直感的に行えたり、プローベ切り替えをタブレットで簡単にできたりするところが有用と感じました。何よりも機動性に優れるため、手術中に予想外の出血のために追加でライン確保を要する時、手狭なアンギオ室での全身麻酔導入時、Rapid Response Teamの出動時など、肌身離さず持ち歩いております。汚れても水洗いできる点、落下しても故障のリスクがない点からも臨床場面でタフに使えて満足度が高いです。エコーガイド下神経ブロックにも使用できますが、病棟で持続神経ブロックのカテーテル先端を確認したい時にも使用できました。

肥満患者や妊婦、小児では硬膜外麻酔穿刺前に硬膜外腔までの深さや位置を確認することが推奨されておりますが、Vscan Airを用いることでスムーズな穿刺に繋がりました。骨盤骨折の手術数が日本で1、2位を争うため、エコーガイド下仙骨硬膜外麻酔の出番も多いですが、コードレスな分だけ取り回しがよく、鮮明な画像を出すことができました。

今後のVscanシリーズに期待すること

Vscanの充電器が専用の形状をしていて愛らしいですが、持ち運びのためのサコッシュや点滴棒に取り付けるホルダーも専用だとコレクター欲を掻き立てられるかもしれません。一番の魅力は価格とのバランスで、今回は思い切って自費購入に踏み切りましたが、もう少し価格が下がれば、ビデオ喉頭鏡のように手術室1室ごとに1台、というような夢の世界が実現するのでは、と思います。自分のスマートフォンで使用できるので、エコーの台数が限られる外勤先に行くような際はプローベだけを持って行くことでストレスなく普段と同じように麻酔をすることができます。
※使用者の経験に基づく記載であり、GEヘルスケア・ジャパン株式会社が仕様値として保証するものではありません。
製造販売:製造販売:GE ヘルスケア・ジャパン株式会社 
製造販売:GEヘルスケア・ジャパン株式会社
販売名称: 汎用超音波画像診断装置 Vscan Air
医療機器認証番号: 303ACBZX00012000
GEは、商標ライセンス下で使用されるGeneral Electric Companyの商標です。 
Vscanは、GE HealthCareの商標です。 
写真の携帯端末はVscan Air一式には含まれておりません。 
適応モバイル端末には仕様上の必須要件があります。詳細は弊社までお問い合わせください。

ご質問はございませんか?ぜひお聞かせください。

JB11864JA