透析室内におけるポケットエコーの可能性

〜エコーガイド下穿刺、除水評価、心機能評価など〜

吉田 絢耶 様

医療法人社団悠友会 志木駅前クリニック 検査部(臨床検査技師・臨床工学技士・血管診療技師)

はじめに

当院は透析クリニックとして法人全体で現在200名以上の患者様に透析治療を行っています。安全で苦痛の少ない医療の提供を心がけていますが、最近は特に透析患者の高齢化とともに透析導入年齢も上がってきているためシャント血管の発達不良などにより穿刺に難渋するケースが多くなってきました。同様に低心機能による除水困難な症例を目にすることも増えており、そういった背景から透析施設における超音波装置を用いたエコーガイド下穿刺、心エコーによる心機能評価の重要性は年々高まっていると感じています。しかし超音波検査は無侵襲に多くの情報が得られる一方、その装置は一般的に大きく操作も簡便とは言えないため何かと手狭になりがちな透析室内では制限が多く、装置の小型化や操作の簡便化は非常に重要な課題でした。


日々の診療のどのようなシーンでポケットエコーをご活用されていますか?

以前より日常でのシャント機能評価はノートPC型のVersana Activeを検査室で使用しており、持ち運びが容易な機種であったため、穿刺トラブル時には透析室のベッドサイドで穿刺用途としても使用していました。次第に穿刺トラブルでのエコーの使用頻度が増えてきたこともあり、検査室でのシャント機能評価と透析室でのエコーガイド下穿刺を分けて考えることとして、ワイヤレスで起動時間も早いハンディ型のポケットエコーを導入しました。これにより穿刺ミスの回数や再穿刺率は大きく改善し透析療法に関する患者アンケートで常に上位に位置していた『穿刺に対する恐怖・不安』も緩和されました。それだけではなく実機を見ればわかるようにVscan Air SLはS:セクタ型とL:リニア型の2種類のプローブが搭載されております。導入当初はエコーガイド下穿刺のためにリニアプローブの利用率が格段に高い状態でしたが最近では医師や臨床スタッフから透析後半の血管内ボリュームや心機能が知りたいとの声をよく聞くようになりIVC径による血管内脱水評価、asynergyの有無、心嚢液、弁膜症の有無などの判断にセクタプローブの使用頻度も高まっています。特に透析中に血圧低下をきたす場合、その要因がボリュームなのか心機能によるもの(弁膜症含む)なのか血圧のモニタリングだけでは判断に困るケースがしばしばあるためセクタ型とリニア型の両刀は非常に重宝しています。

Vscan Airを使ってみていかがでしたか?

まず驚いたのは画質の良さです。昨今ハンディ型のエコーは増えてきましたが高精細でカク付きのない滑らかな描画性能と機器の立ち上げから穿刺までのスピード感は透析室スタッフにも大変好評です。個人的には本体がワイヤレス充電なことも気に入っています。使用頻度が高い機器ですので以前は充電ケーブルの抜き差しによるジャックの破損の経験もありましたが本機はその心配はなさそうです。そしてセクタプローブが搭載されていることが大きな強みだと思います。これにより透析室内での診療の幅は大きく広がりました。一般的にエコーガイド下穿刺に使用する場合、機器の使用は透析の開始時に集中し透析開始後には役目を終えていることが多いですが、セクタプローブがあることで透析後半にも使用用途が生まれ1日を通して余すことなく使えています。透析室内においてはリニアプローブのみのもっとシンプルな機器でいいのではないかという声をよく耳にしますが、心機能の評価をスピーディーに行えるようになったことで診療の質は明らかに向上しました。使用してみた限りでは透析室内に配置する機器として決してオーバースペックではないと感じています。

 また、透析患者の高齢化に伴い透析年数の長期化も進むことでバスキュラーアクセスの管理はますます重要となり、透析室内におけるシャント機能評価や形態評価、エコーガイド下穿刺などのエコーの活用は各施設でさらに進んでくることと思います。透析治療は限られた時間の中で多くの患者を治療するため、機能評価をメインとしたエコー、穿刺や血管内ボリューム、心機能を評価するためのエコーなど、目的別にエコーを選択できることでより的確に患者QOLの向上にも寄与できると感じています。

今後のVscanシリーズに期待すること

画質や機能面に関しては概ね満足しています。あえて挙げるとすれば各種計測をスムーズに行えるツールが充実すると更に良いかと思います。現在はasynergyの有無やvisual EFなど目視的評価に頼る部分もありますが簡単に計測でき数値で表すことができれば説得力は増します。既に様々なシーンで用いられているかと思いますが、透析室という立場から見ても非常に有用な製品でしたので今後の更なる進化に期待しています。
製造販売:製造販売:GE ヘルスケア・ジャパン株式会社
製造販売:GEヘルスケア・ジャパン株式会社
販売名称: 汎用超音波画像診断装置 Vscan Air
医療機器認証番号: 303ACBZX00012000
Vscan Air SLの“SL”は上記医療機器の類型(SLプローブ)です。
GEは、商標ライセンス下で使用されるGeneral Electric Companyの商標です。
Vscanは、GE HealthCareの商標です。
写真の携帯端末はVscan Air一式には含まれておりません。
適応モバイル端末には仕様上の必須要件があります。詳細は弊社までお問い合わせください。
販売名称 汎用超音波画像診断装置 Versana Active
医療機器認証番号 301ACBZX00017000

ご質問はございませんか?ぜひお聞かせください。

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