DiscoveryMI-25の特性を活かした撮像方法の決定


滋賀県立総合病院 研究所
画像研究部門 伊藤 未希 様

施設紹介

 

滋賀県立総合病院は535床の病床を有し、都道府県がん診療連携拠点病院として県内のがん診療の一端を担っています。併設された研究所は総合病院と連携して臨床業務を行うだけでなく、臨床及び様々な基礎的な研究を行っています。画像研究部門では、サイクロトロンを備え、18F-FDGならびに15O-Gas を用いた保険診療を行うほか、各種トレーサ(アミノ酸製剤、アミロイド製剤、タウ製剤など)を用いた臨床研究や、動物実験も含めたPETの基礎研究を行っています。

 

機種選定から撮像方法の決定まで

 

当施設では3代目の装置であり、先代の16列CTを備えたPET-CT装置は2010年から13年間使用していました。修理部品の保証終了を間近に控え、検査を安定して行う上で必要性に迫られて更新に至りました。
ここでは、現場の要望を踏まえ予算がついた半導体PET-CT装置の機種選定から装置導入後の撮像方法の決定までの取り組みをお伝えします。

 

● 更新後に叶えたい基本条件の抽出
従来よりも向上した画質が得られることを前提として、旧装置での問題点を踏まえ、新装置で叶えたいことを医師/技師間で検討し、基本条件を設定しました。

  • これまで行ってきた検査が行えること
    18F-FDG、15O-Gas、その他の臨床研究検査の継続。特に15O-Gas検査は高濃度の15Oを用いる特殊性からメーカ側にも実績があることも重視しました。
  • 頭部~足先までの収集をルーチン化すること
    旧装置では撮像時間の制限もあり、頭部~骨盤部までの収集をルーチンとしていました。しかし、PET後に下肢に病変が発見されることもあり、ルーチンで下肢を含めた『全身』の情報を得たいと考えました。
  • 被ばくの低減ができること
    3.7MBq/kgで行っていた投与量の低減に取り組むこと。
    また、当施設ではCT画像は減弱補正及び融合を主目的としていたため、JapanDRLs2020 (CTDIvol=6mGy)と比べて低線量(CTDIvol=1.5mGy)で行っていました。新装置ではAI技術を使用したCTの再構成技術を用いることで撮影範囲を広げても従来と同程度の低線量撮影が行えることを条件としました。
  • 撮像時間は20分以内とすること
    検査予約枠の増枠を想定し、従来の撮像時間よりも延長しないこと。撮像時間の上限の設定は臨床プロトコルを検討するうえでも目安となり有効でした。
  • 体動及び呼吸のアーチファクトを軽減できること
    検査時の体位は両腕の挙上を基本としていました。メリットとしてCT画像では低線量撮影によるノイズの低減、PET画像では散乱、吸収の低減があげられますが、体動によるアーチファクトや頭頚部の位置ずれを多く経験しました。新装置では、体動を減らすために腕を下垂させた体位でもアーチファクトの少ない画像を得られることを条件としました。検査における患者の苦痛も軽減できると考えられます。また、呼吸移動の影響による横隔膜付近の描出を改善するために呼吸同期を併用でき、なおかつポジショニングの必要がないデバイスレスのシステムをルーチン検査に取り入れられることを重視しました。
  • PET画像の再構成時間が短縮されること
    検査を予約時間に沿って円滑に行うためには、追加撮影の判断をスムーズに行う必要があるため、撮像したPET画像が検査毎に遅滞なく表示され確認できることを重視しました。

 

● 基本条件をクリアするために導入装置に必要な機能

  • 1Bedの撮像範囲の拡大(25cm以上)
  • デバイスレスの呼吸同期(Advanced MotionFree:AMF)
  • ディープラーニングを用いたCT画像再構成法(TrueFidelity:TFI)
  • PET画像再構成を複数同時並行処理機能 (Q.CORE Power Plus)

 

● 撮像方法決定のための検討

  • ファントム実験
    DiscoverMI-25では、半導体PET装置であることに加え、TOFを搭載し再構成にQ.Clearを用いることが出来る点が旧装置と異なるため、画像の印象が大きく変わることが想定されました。実臨床での撮像条件を決定するためにNEMA Bodyファントムを用いた実験を行いました。
    投与量(3.7/3.0/2.0 MBq/kg)に対し30分のリストモード収集を行い、得られたリストデータより、実臨床を想定した収集時間で切り出しを行いました。hot球のSUV値は4、Matrixは256×256とし、再構成条件はQ.Clearのβ値のみ変更させ、投与量、収集時間、再構成条件による各hot球の描出及びノイズを比較しました。
    Fig.2にはβ値を500で一定とした30分及び2分の画像を示します。30分収集のノイズの少ない画像に比べて2分収集ではノイズが見られますが、いずれの投与量でも、旧装置では描出できていない最小球(φ10mm)が明瞭に描出されています。
    Fig.3には3.0MBq/kg相当の画像について、収集時間とQ.Clearのβ値を変えて再構成した画像を示します。収集時間が短くなるとノイズ量が増加するためSNRが低下し、β値を上げることで小さなhot球の描出は低下しますが、ノイズ量が低減されSNRが改善しました。15秒収集の画像でもβ値を上げることで、旧装置(Fig.2)と同程度の画質を得ることができ、旧装置では描出できていない最小球も指摘可能な画像が得られることを確認できました。
  • ボランティア撮像
    本稼働を前に院内の倫理委員会の承認を得て、11名のボランティアにご協力頂き、3日に分けて実施しました。ファントム実験の結果をもとに、基本条件を満たした撮像方法として、超短時間収集(15sec/bed➡Prescan)と通常収集(2min/bed➡Scan)を組み合わせることを前提とし、診断に適した投与量や再構成方法を検討しました。ファントム結果からノイズ量を鑑み、ボランティア撮像では収集時間に合わせたMatrixを設定しました(Prescan:128×128,Scan:256×256)。Table.1に実際に行った検討項目を示します。大量の画像を作成し、医師と画質を確認しながら実臨床の条件を決定しました。
    Fig.4に3.0MBq/kg相当のボランティア画像における収集時間とβ値の違いを示します。15秒の超短時間収集では分解能を下げてもノイズの影響が大きく、ファントムの結果と同様にβ値は1800程度必要であると判断されました。2分収集においてはβ値>600では処理がかかりすぎて少しボケたような印象になり、分解能を保ち半導体装置の特性を生かすためにβ値を600と設定しました。1日目は投与量を変更して行いましたが、収集時間や投与量によるノイズの影響はβ値の調整にて診断に問題ない画像が得られることが確認できたため、2日目以降は投与量を2.0MBq/kgで撮像を行うことにしました。
    また、CT画像についてはTFIのノイズ除去の性能を知るために以下の撮影条件を検討しました。
    • 通常撮影:腕を下垂、撮影範囲(頭から足先)、スライス厚1.25mm(旧装置:4mm)、低線量撮影
    • 遅延撮影:腕を挙上(胸腹部撮影時)、スライス厚1.25mm、低線量撮影
    通常撮影では、旧装置と同様の線量設定であってもTFIの効果により腕のストリークアーチファクトが軽減されました(Fig.5)。また、低線量撮影のため、旧装置では矢状断/冠状断のMPR画像は診断に利用しづらい画質でしたが、TFIにより再構成した画像がMPRでも診断できる画質であると医師からも高い評価を得られました。通常撮影が足先までの全身撮影のため、撮影範囲は長くなりますが、旧装置と同様にJapanDRLs2020よりもかなり低く抑えた線量で良好な画像が得られることを確認できました。
    また、遅延撮影(胸腹部撮影)時は両腕の挙上をルーチンとすることでノイズを低減させ、通常撮影より線量を下げることが可能か検討しました。Noiseindexを40から170へあげることで、ノイズ量は増加しましたが、腕のストリークアーチファクトが無いため、TFIによって効果的にノイズ除去が行われ全体の画質は保たれていました。遅延撮影は通常撮影より低線量でも問題ないと判断されました。
  • 臨床プロトコルの決定
    基本条件を全て満たした臨床プロトコルは以下の通りです(Table.2、Fig.6)。
    撮像時間:20分以内、投与量/2.0MBq/kg
    最終日は決定した撮像方法で実臨床に即した流れの検査を行い、滞ることなく終了出来ました。実際の病変の集積などを考量した微調整は臨床検査を重ねての判断になりますが、装置の性能を踏まえ従来からの撮像方法を大幅に変更したことと、旧装置と画質が大きく異なることから稼働前にファントムやボランティア撮像にて医師と一緒に検証が行えたことは有用でした。また、今回は検査室を含む核医学エリア内の大幅な改修も行っており、従来と異なる検査の流れ、患者・スタッフ動線などの確認のみならず、被験者から患者目線の意見頂き、翌週からの本稼働に向けての準備を行うことができました。
    なお、稼働後に様々な体型の方の撮像を行うなかで、上記の撮像条件では少しノイズの目立つ症例を経験したため撮像条件の見直しを行い、また更なる高画質を目指しては投与量を3.0MBq/kg、β値はPrescan=1800,Scan=500に下げて臨床検査を行っています。

 

今後に向けて

 

当院の撮像方法についての特徴などを医師と評価していきたいと思っています。診断するうえで装置の特性を踏まえたPrescanの利点や注意点などを知っておく必要があり、有用であれば他施設とも共有できればと考えています。
また、従来から行っている15O-Gas検査を再開するために画像の検証を行っています。15O-Gas検査は半減期が2分であるため、一度に高濃度の15Oを使用する検査であり、通常は好まれる高感度が、大量に発生する偶発同時計数によりマイナスに作用する可能性が懸念としてありました。実際に検証撮像(Fig.7)を行い、従来の流量であれば良好な画像が得られることのみならず、流量を減らして被ばくを低減させることも可能であることが確認できたので、臨床検査を再開する予定です。

今後も診断に役立てる画像が提供できるように努めていきたいと思います。

 

※お客様の使用経験に基づく記載です。仕様値として保証するものではありません。

薬事情報

JB07357JA